研究概要 |
本研究では,ナノコンポジット絶縁材料の一連の絶縁破壊メカニズムを検討することによって,その直流電気絶縁物性を解明し,有力な直流電気絶縁材料の一つとしてその実用化に対する基本的指針を明らかにすることを目的とする.直流電気絶縁破壊現象は,空間電荷の蓄積を経て絶縁破壊に至るプロセスを有しており,この一連の破壊プロセスの中で材料特性を検討する必要がある.本年度は,ナノコンポジットにおける直流絶縁破壊に至るまでの空間電荷の蓄積過程と誘電基礎特性を調査した.その結果,以下の知見が得られた.(1)MgOナノフィラーをLDPEに添加したナノコンポジット(MgO/LDPEナノコンポジット)に直流ランプ電圧を印加し,直流絶縁破壊に至るまでの空間電荷の時間変化を取得した.その結果,無添加LDPEは空間電荷の蓄積が進んでいくのに対し,MgO/LDPEナノコンポジットは無添加LDPEより蓄積空間電荷が遥かに少なく,同極性(ホモ)空間電荷が電極近傍に蓄積していることがわかった.(2)MgO/LDPEナノコンポジットの高電界もれ電流特性を取得した.その結果,ナノコンポジットの漏れ電流は無添加LDPEより少ないことがわかった.以上を踏まえると,ナノコンポジット内部に形成されたホモ空間電荷がランプ電圧下において伝導電流の上昇を抑制するため,絶縁破壊の強さを上昇させた可能性を明らかにした.(3)ナノサイズ構造の中でもナノサイズ空孔(ポーラス)構造を有するアルミナ/エポキシコンポジットを用いて,ナノサイズ空孔構造が誘電特性に与える影響を調査した.その結果,ナノサイズ空孔構造を持つアルミナ/エポキシコンポジットは,通常のアルミナ/エポキシコンポジットよりも低誘電特性化することがわかった.
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