超微細インクジェット工法を用いて、メタマテリアルの最も基本的な構成要素(メタアトム)である分割リング共振器を装荷した光伝導アンテナをガリウムヒ素基板上に作製した。昨年度までに、メタアトム装荷光伝導アンテナの放射スペクトルと偏光特性が、メタアトムの構造と装荷位置に依存することを明らかにした。平成23年度には、メタアトム装荷光伝導アンテナの特性を、光でスイッチする手法を提案、実証した。 分割リング共振器は、一部が途切れたリング形状をしている。リングの途切れた部分にレーザー光を入射すると、半導体基板にキャリアが励起され分割リングのギャップがショートされる。これを利用し、分割リング共振器の共振を光で変調できる。光伝導アンテナを励起する近赤外レーザー光とは別に、装荷された分割リング共振器を励起するためのレーザー光を導入できる光学系を構築した。メタアトム装荷光伝導アンテナの放射スペクトルおよび偏光特性が、入射した近赤外超短パルスレーザー光の、強度とタイミングによってコントロールできることを実験的に示した。また、半導体に励起されるキャリアの寿命を考慮した時間領域有限差分電磁界シミュレーションで実験結果がよく再現できることを示し、今後の光伝導アンテナの簡便な設計方法に指針を示した。本手法の特徴は、複雑な電気回路を使わずに光だけで光伝導アンテナの構造を変えられることで、光及び電気信号のテラヘルツ波変換への利用が考えられる。本研究では1個または2個のメタアトム装荷アンテナを対象にしたが、今後、より複雑で高度な系を用いたテラヘルツ波の伝送や放射パターン制御などへの発展が期待される。
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