本研究の目的は、シリコンや金属材料を用いた従来型MEMSデバイスとイオン導電性高分子アクチュエータ(イオン導電性高分子金属接合体<Ionic Polymer-Metal Composite : IPMC>)を融合した異分野融合型デバイスの作製に必要な要素技術の基礎の確立である。本年度は、MEMSとIPMCを接合する際に予想される技術課題の解決のうち、1.シリコン基板とIPMCの密着性向上、2.アクチュエータ用電極接合方法の検討を行った。これらの要素技術を開発するにあたり、代表的なMEMS作製技術であるフォトリソグラフィー技術、エッチング技術との融合を考慮した。1.シリコン基板とIPMCの密着性向上:IPMCはフッ素系イオン導電性高分子膜を用いるため、基板とIPMCの密着性が十分でなく、剥離しやすい。このため、基板としてMEMS材料として多用されるシリコンを多孔質化して用いた。この基板上にイオン導電性高分子(Dupont社製Nafion)を分散溶液を用いて成膜することで、基板と高分子膜の密着性が向上し剥離を防止できた。2.アクチュエータ用電極接合方法の検討:MEMS技術を応用したIPMCの電極作製技術の確立に向け、無電解めっきによる電極接合条件を最適化するとともに、蒸着によるドライプロセスでの接合により電極を成膜し、評価した。この結果、蒸着による電極の成膜では基板に接合した状態では基板側への電極形成が困難であり、無電解めっきで作製した場合よりも剥離しやすいことと、動作特性が安定しないことを確認した。一方、無電解めっきにより電極を成膜した場合、イオン導電性高分子と他の基板とが接合できず剥離していた。しかし、上述したように多孔質基板を利用することにより、剥離せずに無電解めっきが可能であることを確認した。 以上の得られた結果を基に、さらに要素技術の開発・改良を行う予定である。
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