本研究の目的は、シリコンや金属材料を用いた従来型MEMSデバイスとイオン導電性高分子アクチュエータ(イオン導電性高分子金属接合体<Ionic Polymer-Metal Composite:IPMC>)を融合した異分野融合型デバイスの作製に必要な要素技術の基礎の確立である。本年度は、前年度に引き続き、MEMSとIPMCを接合する際に予想される技術課題の解決のうち、1.シリコン基板とIPMCの密着性向上、2.アクチュエータ用電極接合方法の改善を行った。特にイオン導電性高分子アクチュエータにおける電極接合は重要な課題である。前年度の成果から、無電解めっきにより電極を成膜した場合、多孔質基板に成膜したイオン導電性高分子は剥離せずに無電解めっきが可能であるが、複雑な動きを実現させるために不可欠なパターン電極の接合には、多くの課題があった。このため、近年代表的なMEMS作製技術として用いられているドライエッチング技術を活用した電極接合方法を検討した。この結果、適切なエッチングガスを使用し、加工領域を制御することにより、イオン導電性高分子アクチュエータとして最適な無電解めっきによる電極形成領域を制御できる可能性を確認することができた。この技術は高性能なアクチュエータを作製するために有用であるため、加工条件の最適化を行う必要がある。また、本手法により作製しためっき電極は、従来のめっき電極と同様に、IPMCの電極として利用できることを確認した。 以上の得られた結果を基に、さらに要素技術の開発・改良を行う予定である。
|