研究概要 |
二酸化炭素排出量削減の要求が高まる中,自動車などの車体軽量化に直結する高強度構造材料の性能向上が必要とされている.本研究では,高強度・高延性を両立するために複合化・複相化を行った高強度構造材料を対象とし,微細組織観察とさまざまなスケールにおける観察を行い,その結果を組合せて考察を行うことにより,上記の高強度材料で観察される特異かつ複雑な変形挙動を解明することが目的である.本年度は次に記す結果を得た. 1.X線回折法によるテクスチャー,転位密度測定法について供試材への応用の検討を行った後,それぞれデータ取得と解析を行いマルチスケール解析の一端とした. 2.前年度より引き続き走査型電子顕微鏡による結晶方位測定とその結果の解析を行い,透過型電子顕微鏡観察とX線回折法などのマクロスケール観察の間を埋める情報を得た. 3.透過型電子顕微鏡による微細スケールにおける観察を行った.例えばマルテンサイトラス構造の詳細を変形前後で観察し,ラス構造と変形機構の相関について考察した. 4.上記の観察結果から,ラス構造のミクロスケールにおける変形に及ぼす影響からマクロな変形・破壊挙動に至るまでの過程に,いくつかのスケールで観察される不均一変形帯が大きな影響を与える可能性を示した.また,高強度相と高延性相を組合せた場合に生じる異相境界付近に生じるひずみに注目し,複相化による効果について考察を行った.さらに,複合組織中の高強度相と高延性相境界部が塑性変形の不一致をどのように緩和しているかについて考察を行い,複合高強度材料の延性改善へ向けて基礎的知見を得た.
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