研究概要 |
本研究の目的は,鉄バクテリアが作るバイオジナス酸化鉄の原子レベルでの構造を明らかにすると共に,これをLiイオン電池の電極材料(正極および負極)として応用することである.平成23年度は,放射光を用いた充放電機構の解明と様々な手法を用いた充放電特性の改善を検討した.以下に研究成果の概要を記載する. 正極としての特性は平成22年度に評価したので,負極としての特性評価を行った.負極の特性評価はバイオジナス酸化鉄を用いて電極を作製し,対極としてLi箔を用いて,3.0-0Vの電圧範囲で充放電測定を行うことにより評価した.基礎特性を評価したところ900mAh/gを超える可逆容量が得られ,良好なサイクル特性とレート特性を示すことが明らかとなった.現行負極材料のグラファイトの理論容量が372mAh/gであることを考慮すると極めて良好な特性であると言える.前年度の結果と合わせて考えるとバイオジナス酸化鉄は2Vクラスの正極および高容量かつ良好なサイクル特性とレート特性を有する負極材料として応用可能であることが明らかとなった.その充放電機構は,1.5VまではFe^<3+>→Fe^<2+>の反応が進行し,それ以下の電位ではFe^0(金属鉄)が関与する反応であることがわかった(コンバージョン反応).充放電特性を改善するために加熱処理を行いバイオジナス酸化鉄中の鉄分を一部結晶化させたところ,高レートにおいて高容量(600mAh/g以上)かつ良好なサイクル特性を示すことが明らかとなった. この成果は,微生物が作る酸化鉄をLiイオン電池電極材料として適用した初めての例であり,これを基礎として低コスト,高容量,高出力のLiイオン電池の開発が期待される.
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