従来の研究で、紫外光下で水の光分解活性を示すKTaO_3をポルフィリン系色素で表面修飾すると、活性が向上することを見出した。本研究ではKTaO_3に代えて可視光応答性を有する化合物を用いることで、太陽光下で効率よく水を分解する光触媒を開発することを目的とし、修飾色素や無機半導体の探索、助触媒の最適化による水の光分解活性の向上効果について検討した。 従来のポルフィリン色素に代えてキサンテン系やトリフェニルメタン系等の様々な有機色素でKTaO_3を修飾したところ、大半の色素において水素及び酸素の生成速度が向上し、特にローダミン6Gが高い活性の向上効果を示した。しかし、これらの色素を用いると量論比よりも酸素の生成量が少なく、色素の一部は犠牲剤的に作用していたことが示唆された。また、これらの色素は光照射によっても分解するため、長期の光触媒反応試験では失活してしまうことがわかった。一方、無機半導体についてはN添加TiO_2、WO_3、TaONやGaZnON等の可視光応答性の化合物を色素修飾し、水の光分解活性を調べた。その結果、GaZnONやWO_3、N添加TiO_2において水素生成速度は向上したが、いずれの触媒でも酸素の生成は観測されなかった。この時点では水素生成用の助触媒であるPtのみを担持していたことから、色素修飾GaZnONについて助触媒の最適化を検討した。その結果、水素生成用にRu、酸素生成用にIrO_2、逆反応抑制用にNiOを助触媒として用いることで水の光完全分解が達成され、色素修飾と助触媒の最適化によって、水素の生成速度は約12倍に向上することが明らかとなった。 以上の結果から、色素修飾はバンドギャップの小さな半導体光触媒の水分解活性の向上にも有効であり、助触媒による気体生成過電圧の低減は色素修飾光触媒上での水の光完全分解反応に不可欠であることを見出した。
|