研究概要 |
本研究は,張力安定化構造の効果的な制振手法を確立することを目指している.近年,宇宙科学においては,ミッション内容の高度化・細分化が進んでおり,構造システムに対する要求は,より高精度かつ高機能なものへと高まっている.そのため,収納展開性に優れ,軽量で大規模な構造を実現可能な張力安定化構造の高精度化,とりわけ振動制御は,重要な課題である.張力安定化構造の主構造である弦や膜面は,変形の方向と変位の方向が直交するため,従来の制振手法をそのまま適用しても十分な効果を得ることができない.そこで,本研究では,張力安定化構造の支持部を梁,主構造を膜面とモデル化し,前者は圧電素子によるスマート化,後者は動吸振器による振動制御によって,効果的な制振の実現を試みている.本年度は,特に支持部の振動制御に着目し,研究を進めて来た.従来の手法よりもロバスト性を向上させるため,複数に分割した圧電素子をアルミニウム梁に貼付し,それぞれにわずかに特性を変えた電気回路を接続することで,多重動吸振器としての振舞いを模擬するような系を考えた.電気回路の特性は,ガラーキン法に基づくモデルを導出し,自作の最適化アルゴリズムにより数値的に決定した.その上で,周波数特性実験を行い,モデルの有効性と提案する手法の効果を確認した.さらに,次の段階の実験を行うために,膜面を2本の梁で支持した張力安定化構造の実験装置を製作した.今後は,圧電素子による支持部の制振と,動吸振器による膜面の制振を協調させていくことが課題である.
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