研究概要 |
現在までに,数多くの盛土構造物が建設されている.これらの構造物のほとんどが,締固められた不飽和土で施工されている.供用開始後,降雨や地震などの外的要因を受け,盛土構造物としての機能が低下しているものも少なくない.また不飽和土は,土/水/空気の三相で構成されており,施工中・施工後の乾湿の繰り返しや,土中内の間隙空気圧の封入による盛土構造物の機能低下も懸念される.本研究では,その中でも施工段階における締固めによる不飽和土の力学挙動を三相連成問題として解き,その後の長期供用過程における力学挙動変化を解析から定量的に評価することを目的としている.そこでまず,三相連成解析を行うため,河井ら(2004)の水分保持特性モデル,大野ら(2008)の不飽和土構成モデルがすでに組み込まれている土/水連成有限要素プログラムに,間隙空気圧の挙動を表現できるよう拡張した.すなわち,研究対象とする不飽和土の力学挙動を表現するため,不飽和土/水/空気連成有限要素プログラムによる解析的検討を行った.まず,静的締固めにおいて,締固め速度を変えシミュレーションを行った.その結果,載荷速度が速くなると間隙空気の封入量が増加し,外部応力に対する分応力として間隙空気圧が働くことで変形が妨げられ体積圧縮量が減少する.つまり,載荷速度が速くなるほど供試体内に空気が封入され,間隙空気圧が分応力として働くため,有効応力が低下し体積変化が妨げられると言える.以上から,静的締固めシミュレーションで載荷速度の違いによって締固めに影響を与える結果を得た.また,締固めシミュレーションから得られた結果を初期値とし,築堤シミュレーションを実施した.施工完了後の経時変化に対する盛土の強度,変形を定量的にまとめた.
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