平成22年度はまず、立体画像解析を用いた非接触型三次元変形計測システムの基本部分の開発を行った。システムを用いて構造部材の三次元変形を計測するにあたっては、計測対象に対して焦点距離・レンズ性能等が同じで、撮像面が同一平面かつ一直線上となるような調整を施した2台の光学機器(デジタルスチルカメラ)により対象物の画像情報を取得し、これらを接続した計測用パーソナルコンピュータで画像解析することで変形を算定する方法を採用した。この方法は計測対象物の左右画像からその視差を利用することによって三次元座標を算定することができ、システム構成が非常にシンプルであるため、機器による誤差が少ないことがその特徴であり、適切な光学パラメータを設定することで高精度な計測が期待できる。画像解析を行う上では対象物に貼付した複数のターゲットマーカーを基準点として、任意の時間間隔で撮影を行うインターバル撮影により取得した画像データから、マーカーそれぞれの座標を追跡することによって各点の変位量を算出し、得られた変位量からひずみを求める方法を用いた。また、本研究では画像解析を行うための計測用プログラムを開発するにあたっては、その開発用の環境として、数値解析ソフトウェアMatlabを用いて本研究代表者自らがその開発にあたっており、今後の研究においてもより研究目的を捉えた柔軟な対応が可能であると思われる。 これまでに計測システムの基本部分のプログラミング開発を行った。今後は比較的単純な形状の建築構造材料を用いた試験体(コンクリート・鋼材等)を対象に実験・計測を行うことで本システムの妥当性・精度の検証をすると同時に、構造部材の変形メカニズムや変形集中等の現象解明を含めた考察を行う。
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