前年度までに開発を行った画像解析を用いた変形計測システムの精度を検証するために、平成23年度はまず、建築構造部材を対象とした実験・計測を行った。検証実験では、建築構造に使用される代表的な材料として、コンクリートを使用した標準圧縮試験体およびコンクリートと鋼管の複合材料であるコンクリート充填鋼管試験体の二種類を複数体作製して部材軸方向への圧縮試験を行い、本研究で新たに開発を行った計測システムを用いた非接触型変形計測を実施した。計測を行う際には、本システムによるものと併せて、比較のため従来型のひずみゲージによる変形計測も行うことで計測結果の比較を行った。この計測結果の比較から、本システムによる計測結果は従来の接触型計測結果と比べると若干計測精度に劣る点があり、一部で今後の改善が必要であるものの、現状においても十分な精度で対象物の変形を追跡可能であることがわかった。特に、鋼管が座屈するほど大きな変形が生じたコンクリート充填鋼管試験体については、鋼管座屈後に接触型のひずみゲージによる計測が困難になったことに対して、本システムによる計測値は比較的安定した結果が得られている。このことは今後、部材自体を塑性化させることを主とするダンパーのようなデバイスの変形計測に、本計測システムを適用することを視野に入れた場合には非常に重要であり、本研究で採用した非接触型計測法の優位性を示す結果であると言える。 また、本計測システムを用いることで、計測対象物に生じる連続的な広がりを持つひずみ分布の可視化やひずみ集中箇所の目視による特定といった、従来までは有限要素解析等の結果でのみ表示されていた事柄を表現可能としたことで、今後の応用によっては、構造部材の変形メカニズムや損傷過程についてもより簡便に明らかとすることができるものと確信している。
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