住宅の自然換気・通風は涼感を得るための省エネルギー手法として有効であるが、2003年の建築基準法改正以降、機械換気設備の設置が義務づけられ、近年の換気設計手法は省エネルギーに逆行していると言える。本研究では風力換気現象に着目し、パッシブな換気機構を導入した際の住宅の自然換気性能予測及び評価を行うことを目的とした。 当該年度における研究実施計画とその研究成果を以下に示す。 1.換気促進装置を有する住宅モデルにおける換気量計算 複雑な換気抵抗を有する換気促進装置としての越屋根を有する住宅を対象とし、前年度までに得られた換気駆動力(風圧係数)と換気特性(室内圧と換気量の関係)を用い換気量算定を行った。その結果、建物単体での換気性能は大きく変わらないものの、現実に想定される周辺に建物が存在するような状況においてより多くの換気量が得られることが示され、装置の有効性を示すとともに換気量算定のための設計資料の整備を行った。 2.数値流体力学における真値の取得を目的とした風洞実験 換気促進措置周辺の気流性状を明らかにすることに加え、数値流体力学(CFD解析)の精度検証を行うための真値となり得る風速分布の取得を目的として風洞実験を行った。気流の可視化実験により定性的な気流性状を明らかにした上で、熱線流速計を用いて二次元の速度分布を明らかにし、周辺建物の有無、隣棟間距離、風向をパラメータとして、建物の剥離域及び装置高さと、その際に得られる換気駆動力(風圧係数)との関係性を明らかにした。 3.CFD解析を用いた室内機流分布の詳細な解析 Large Eddy Simulationを用いたCFD解析により越屋根設置建物の居住域を対象として汚染物希釈に有効な実質の換気量(Purging Flow Rate)の評価を行った。この結果、換気促進装置の有効性を示すとともに乱れの影響も考慮した実質的な換気量を定量的に評価した。
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