研究概要 |
本研究の目的は,インターネット上で匿名性を有するサービスを実現するために,3つの匿名性に関する方式(匿名通信方式・匿名認証方式・匿名署名方式)を開発することである.平成22年度は,3つの中で最も重要な技術である匿名通信方式の1つである3-Mode Net(以下3MN)の開発・改良を念頭に置いて研究を進めた.具体的には,3MNにはこれまでいくつかの問題点が指摘されており,平成22年度においては,指摘されていた問題点のうち,(1)受信者の匿名性が評価されていない点,(2)多重暗号化による中継ノードの負荷が大きい点,(3)通信に要する中継ノード数が極端に大きくなる点を解決した. まず(1)に関しては,3MNでは送信者の匿名性は定量的に評価されているが,受信者の匿名性は評価されていなかった.そこで,送信者の匿名性の評価手法と同様,ランダムウォーク理論および確率母関数の性質を応用して,受信者の匿名性を定量的に評価することに成功した.これにより,送信者の匿名性だけでなく,受信者の匿名性も考慮することが可能となり,送受信者双方の観点から評価可能となった. 次に(2)に関しては,多重暗号化を使わない方式である,ループバックを用いた匿名通信方式の開発を進め,本年度においては,数値シミュレーションを通して3MNと比較し,その実用性を評価した. 最後に(3)については,3MNでは,いつメッセージが届くかという保証がされておらず,場合によっては極端に通信時間がかかることがあった.そこで,非復元抽出を応用した3MN方式,オニオンルーティングと3MNを併用する方式の2つの方式を提案し,通信にかかる中継ノード数の上限を設定可能とした. 以上が平成22年度の研究成果であり,どれも3MNの問題点を解決するための重要な研究である.また,これらの研究成果については,全て論文誌・国際会議・研究会等で発表済みである.
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