研究概要 |
粒径や形状のバラツキが精緻に抑制された単分散微粒子(CV 10%以下)は,均一性の高い粒子特性をもつことから,これを粉体素材として用いることで材料品質のバラツキが抑制され,従来品質を凌ぐ高品位材の市場供給が可能となる.本研究では,単分散な粒径分布が再現良く得られる操作条件範囲を明らかにすることを目的として,高分子電解質であるポリエチレンイミン(PEI)の添加量を変化させた場合の結晶品質(粒径・分布幅・形状)の変動を調査した.その結果,PEIを4.5g/L程度添加し酸性条件にて晶析操作することで,粒径4±1μm,CV 12±5%の単分散微結晶を約3g/hrで簡易製造できた.製品結晶の外観および粒径分布に対する従来法と本法の比較について,市販品(従来法)は粒径や晶癖が不揃い(CV 37%)であるのに対し,改良品(本法)は均質(CV 12%未満)となった.PEI無添加の場合,製品結晶個々の単分散性は概ね良好であったが,貫入晶や凝集晶が見られた.PEI添加の場合,無添加に対して粒径が90%程度微小化し,結晶間の貫入や凝集が抑止された.PEI添加量の変動に対する粒径・分布幅・CV・凝集率の挙動は,いずれもPEI量に対して減少の傾向となり,PEI量により結晶品位を操作しうることが示された。本系における各スペックの可変幅は,添加量0.001~30g/L,分子量1200~70000の適用範囲にて,粒径3-15μm(相対誤差±55%),分布幅0.38~18μm,CV4~12%,凝集率0.1~0.9(±5%)程度と推察された.PEIの役割について,PEI添加量は投入されるイミン量に相当し,核発生前にイミンと原料の金属イオンが錯体様構造を形成することで核発生個数が操作されることを明らかにした.
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