砂粒子表面におけるカルサイト(炭酸カルシウムの結晶形態の一つ)の析出は、砂の液状化抵抗特性を著しく改善できることが明らかとなっている。また、カルサイトはイオン結晶であり、イオン結晶特有のオストワルド熟成の効果により、カルサイトが析出した砂地盤においては、その骨格破壊後にも強度が回復する可能性が考えられる。本研究は、カルサイトを析出させた砂の自己修復機能とその影響因子の関係解明を目標に、本年度はその検討に必要な基礎的知見の収集とともに、その自己修復機能に関する概略的検討を行った。 カルサイト析出には、その析出量に関する再現性が高いウレアーゼと尿素・塩化カルシウム溶液の二液注入方式を用いる。そこでの化学反応特性を明らかにするためこれら混合溶液中の時間経過に伴うカルサイト析出量の変化を計測した。ウレアーゼには3u/mg、130u/mgの2種類を使用した。その結果、ウレアーゼの性能が高いほどカルシウム析出速度が大きいことが確認された。この結果から濃度調整し、反応速度による析出分布の不均質性の影響を除去した二液注入によるカルサイト析出実験を行った。その結果、溶液が通過する試料粒径が大きいほどカルサイト析出の均一性が高いことが明らかとなった。さらに、カルサイトが析出した砂のオストワルド熟成による自己修復機能の概略で検討するため、ウレアーゼ、尿素・塩化カルシウム水溶液を利用しカルサイトを析出させたガラスビーズ固化供試体を攪乱・再構成し遠沈管内で水中養生したところ、3日後には遠沈管を上下逆にしても試料が落下せず、自己修復機能の可能性を見出すことが出来た。
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