研究概要 |
カルサイトなどのイオン結晶には、オストワルド熟成、つまり小さな結晶粒子は、水に溶けた後大きな結晶の表面に再び沈殿する現象が生じる。このことは、カルサイトによる砂粒子間架橋が地震などで一度崩壊した後も自然に修復される機能、すなわち自己修復機能の存在を暗に示している。地盤改良技術における自己修復機能の存在が明らかになれば、再工事が不要となり、社会的要請であるトータルコスト削減につながると考えられるが、これに関する研究は見当たらない。そこで本研究では、カルサイトを析出させた砂の自己修復機能の有無、およびオストワルド熟成の期間と、力学特性、特に液状化強度の回復レベルの関係を明らかにすることを目的に、カルサイトにより形成された砂の骨格を一度破壊した砂供試体を一定期間養生し、その養生の有無による液状化特性の違いを非排水繰返し三軸試験を行い比較することで、養生による自己修復機能の有無を調べた。 その結果,カルサイトを砂質量の1%析出させ骨格破壊した砂を数日程度養生した程度では,液状化強度の回復は見られないことが分かった.一方,多量のカルサイトを析出させたガラスビーズ試料の骨格を破壊し,3日間養生した試料では,ガラスビーズが再固結していた.このことより,1%と少量のカルサイト析出では,間隙水中のカルシウムイオンが少なく,オストワルド熟成が数日程度では液状化強度に影響を与えるほど進まなかったことが液状化強度が回復しなかった原因と考えられる.一方,一度カルサイトを析出させておけば,骨格を破壊した砂の再液状化後の再圧密試験により,体積圧縮は抑制されることが分かった.
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