研究概要 |
ナトリウム冷却高速増殖炉の実用段階では,伝熱管でのレーザー溶接補修技術の標準化が重要となる.溶接部には熱履歴に起因した残留応力が生じ,構造物の破壊や変形に対して重要な要因となるため,溶融・凝固過程と残留応力の関係を明確にする必要がある.しかしながら,溶融過程における溶融池の界面挙動やその内部の流れ場や物理量の詳細は未だ明らかになっていない.本研究は,この現象に対し,実験に比べ低コスト且つ系統的な検討が行い易い等の特徴を有する数値シミュレーションにより解明することを目指し,シミュレーションコードの開発,溶融池(金属がレーザー入熱により溶融している部位)内部の対流やその他物理量のレーザー溶融機構を明らかにすることを目的とする.平成22年度では,レーザー入熱→金属溶融→熱対流現象(熱輸送)→凝固プロセスといった一連のレーザー溶接プロセスの代表的な物理過程をシミュレーションするためのフレームワーク(気・液・固3相統一シミュレーションコード)が完成した.平成23年度は,溶融池内対流の現象論的評価とその温度場との相互作用に関する調査及び,残留応力評価へ向けたシミュレーションモデル構築のために,簡易的な応力評価モデルの実装・評価を行った.この結果,従来の残留応力解析で考慮されていない溶融池内対流現象の温度分布への影響は大きく,対流現象の解明が残留応力を決定する凝固後の温度分布にも大きな影響を与えておりこの評価が非常に重要である事が分かった.また応力評価では,熱応力モデルを実装し,菖蒲らがSPring-8で実施している残留応力測定結果に定性的ではあるが概ね一致した結果が得られている.この研究により,将来我々が目指している溶接プロセス標準化へ向けた数値シミュレーションコードとして有効なツールが開発されたと言える.
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