粒子線治療場で使用できる線質弁別可能なリアルタイム線量計の開発を目指すため、小型のフォスウィッチ検出器の開発と粒子線・ガンマ線に対する応答実験を行った。当該年度では前年度に作成したチューブ型のCaF2と液体有機シンチレータを組み合わせた小型のフォスウィッチ検出器の粒子線応答の測定を実施した。放射線医学総合研究所のサイクロトロン施設にて陽子に対する応答実験を、同所のHIMACにて炭素に対する応答実験を行った。いずれの実験においても照射中に発生するガンマ線も同時に測定しており、粒子とガンマ線からの応答信号を、高速デジタイザーを利用して波形情報として測定を行った。独自に開発した解析コードにより測定した波形情報から本検出器により粒子とガンマ線の応答を良く分離できることを確認した。しかし、発光信号が小さいため検出器に付与したエネルギーの分解能が十分でないことが分かった。本実験結果を受けて検出部であるチューブ型シンチレータの内径・外径の再設計を行った。実験で得たCaF2シンチレータと液体有機シンチレータの信号強度を考慮して、液体シンチレータ部の体積を大きくする設計とした。再設計したチューブ型シンチレータの形状は外径6mm、内径5mmであり、本形状では直接結晶育成による製作が難しいため、バルク型結晶を切削することにより製作した。当該年度では再設計したチューブ型シンチレータと有機液体シンチレータから検出部を再製作することができたが、それを利用した応答実験をすることができなかった。本研究ではチューブ型シンチレータを用いることにより小型のフォスウィッチ検出器作成することにより、粒子線治療場における線質弁別が可能であることが示された。本検出器は分解能を向上することにより線質弁別可能なリアルタイム線量計としての利用が期待できる。
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