研究概要 |
本研究は、インド洋西海域沿岸の歴史的港市において居住地形成を行ったインド人商人の都市形成の実像を明らかにすることを目的とした。具体的には19世紀後半から20世紀初頭にかけての近代期におけるグジャラート商人の交易ネットワークに着目し、インド西部沿岸、南アラビア・東アフリカ沿岸を対象地域とした。本年度は2010年12月にインド、2011年2月にオマーンにおいて臨地調査を行い、主に次の視点から現地調査を行った。1.インド洋海域に伝播したインドの建築形式・様式の源流:近世以降にインド洋西海域へ移住したグジャラート商人の本拠地であるキャンベイCambay、スーラトSurat、ランデルRanderを対象に旧市街の施設分布、建築様式に関する調査を実施した。調査により、インド人商人の邸宅建築において2系統の住宅形式の存在を確認した。これらは19世紀後半頃の東アフリカ沿岸においてグジャラート商人が所有する邸宅建築と建築形式・様式的に類似するもので、近代に海域沿岸に普及した居住様式の祖形と考えられた。2,オマーン沿岸部におけるインド的建築要素の把握:19世紀初頭までオマーン海洋帝国の拠点であったマスカットMuscatではスルタン・カーブース大学および文化遺産省において都市、建築関連の文献収集に加え、サラーラSalalah、ミルバートMirbat、イブラIbra、ムダイリブAl-Mudayribで建築形式、建築部材・装飾に関する悉皆調査を行い、サラーラでは旧市街の街区構成および住宅実測調査を行った。 調査により、沿岸部における伝統的住宅の基本的構成と、東アフリカの都市を経由してオマーンへのインド的建築要素の定着を確認できた、次年度は、本年度に時間的制約で実施できなかった東アフリカ沿岸のタンザニア、マダガスカルでの臨地調査を予定している。
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