研究概要 |
本研究計画では、無細胞タンパク質合成系を用いて3種類の主な分子シャペロンについてタンパク質の凝集抑制効果を綱羅的な実験によって評価し、その結果を統計的に解析するという手法を用いることで各シャペロンの機能やタンパク質の凝集性について新たな知見を得ることを目的としている。 本年度はその第一段階として、まず凝集抑制効果を網羅的に評価するための実験の準備(無細胞タンパク質合成系の調製及び分子シャペロンの調製)を行った。無細胞タンパク質合成系は共同研究者である東京大学の上田卓也教授から一部提供を受け、残りの因子は自身で精製を行った(大腸菌で大量発現させ、液体クロマトグラフィーによって分離精製した)。また分子シャペロンについては、Trigger Factor,GroEL/ES,DnaK/DnaJ/GrpEについて、GroEL以外は全て6xHisタグが付加された状態で大量発現させ、液体クロマトグラフィーによって分離精製を行った。GroELについては野生型(タグなし)のものを大量発現させて精製を行った。 次に実験条件の最適化として、3種類のシャペロンそれぞれについて加える濃度を変化させて凝集抑制効果を調べ、最適と考えられる濃度を決定した。これについては過去の文献の報告も参考にした。 これらの準備の後、実際に約800個の凝集性の高いタンパク質に対して、過去に実績のある遠心分離による手法を用いて、各シャペロンの凝集抑制効果の網羅的な実験を行った(シャペロンを加えない条件を含めて約800x4回で約3,200個分の実験を行った)。分子シャペロン精製時にいくつか液体クロマトグラフィーによる精製条件の最適化に難航したものもあったが、準備後の約800個のタンパク質に対する網羅実験では思っていた以上に順調に進行し、当初の予定通り本年度内に全てのタンパク質についての評価を終えることができた。
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