研究概要 |
本研究計画では、PURE systemという再構築型の無細胞タンパク質合成系を用いて大腸菌で主に働くとされている3種の分子シャペロン(Trigger Factor,DnaK/DnaJ/GrpE、GroEL/ES)について、タンパク質の凝集抑制効果を網羅的な実験によって評価し、その結果を統計的に解析し、各シャペロンの機能やタンパク質の凝集性について新たな知見を得ることを目的としている。 本年度は前年度に完了した約800x4回の凝集評価実験による大規模データセットの解析を主に進めた。具体的な解析内容としては、当初から予定していた分子量・等電点・アミノ酸組成といった一次元的な性質、立体構造(SCOP fold)や四次構造(ホモ/ヘテロオリゴマーなど)といった性質と、各シャペロンの凝集抑制の度合いとの比較を行ったことに加え、過去に報告されているシャペロン基質候補との関連性についても調査を行った。その結果、DnaK/DnaJ/GrpEとGroEL/ESについては分子量やSCOP foldについて明らかな差を見いだすことができた。その一方で、アミノ酸組成については、PLS回帰法などの多次元的な解析を用いても凝集抑制の度合いと有意な関係はみられなかった。 またTrigger Factorについてはそれ単体では凝集抑制効果があまりみられなかったが、他の2種のシャペロンが共存する条件で再び凝集抑制効果を評価したところ、他のシャペロンと協同的に働く様子を観察することができた。 以上の結果をまとめた論文を、今年の初めに米国の科学雑誌であるProceedings of the National Academy of Sciences誌に投稿した。現在1度のリバイスを経て、結果の報告を待っているところである。
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