研究概要 |
細胞内で小胞輸送や特定の構造を保持するためのアンカーとして機能しているミオシン6は,ミオシンスーパーファミリーの中で唯一アクチンフィラメントのマイナス端方向に進むミオシンである.このユニークな運動メカニズムを解明するために,国内外で活発に研究が行われている.その中でも驚くことは,ミオシン6が構造的に予想されていたステップサイズ(約12nm)よりも大きなステップサイズ(アクチンフィラメントのヘリカルハーフピッチに相当する約36nm)でハンドオーバーハンド運動することである.しかしながら,この運動メカニズムを説明するための構造的証拠は提出されていない.そこで,本研究課題では,これまで開発・改良してきた世界最高性能の高速原子間力顕微鏡を用いて,運動中のミオシン6の構造形態変化を直接観察することで,その動作メカニズムを解明することを目的としている.これまでの実験において,運動中のミオシン6は大小のステップサイズで前進運動ならびに稀に後進運動を起こすことが直接観察された.そのときの,運動様はハンドオーバーハンド様とインチワーム様が混在していた.また,(1)2つのモーター部を大きく広げた構造形態をとることで大きなステップ運動をすること,(2)2つのモーター部が隣り合うアクチンのサブユニット上に寄り添うような形で結合し,この構造形態でアクチンフィラメント上に滞在する時間が長いことが明らかとなった.この構造形態は,細胞内の特定の構造を保持するためのアンカーとして働くミオシン6の機能を説明するものであると考える.以上は,運動中のミオシン6の構造形態変化を直接捉えた画期的な成果である.
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