細胞骨格タンパク質による核機能の制御機構を解明するため、計画初年度となる本年度は、以下の内容の計画を実施した。【1.核移行する細胞骨格タンパク質の検索】両親媒性ヘリックスを持つ数種の細胞骨格タンパク質について、核外輸送阻害剤で処理した細胞における局在を調べたところ、少なくとも4種は核内に蓄積することが分かった。これらのうち、アクチニン(分子量105kDa)スペクトリン(275kDa)に着目し、そのcDNAをクローニングして細胞内発現系および昆虫細胞を用いた発現精製系に組み込み、発現に成功した。【2.核内移行を促す要因の検討】核内外の量比を変化させる要因を探るため、各種の阻害薬剤やシグナル伝達系薬剤を用いて目的タンパク質の局在を調べたところ、アクチンはカルシウムイオノフォアにより核膜へターゲットされること、スペクトリンは恒常的にごく少量が核内に含まれている可能性が高いことが分かった。【3.核内外移行経路の特定】アクチニンとスペクトリンのアミノ酸配列には、核外輸送シグナルはあるが核内輸送シグナルは存在しない。半透過化細胞を用いた核輸送実験から、これらはインポーチンなどの輸送担体がなくても核内に到達できることが証明され、核膜孔の通過には疎水的相互作用が関与していることが示唆された。これらのことから、核内外を行き来する細胞骨格タンパク質について、その存在を検証し、核膜孔通過の分子メカニズムのモデルを組み立てることができた。翌年度にはより詳細にその動態を解析するほか、これらのタンパク質の核移行が核機能に与える影響にも着目して研究を進める予定である。
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