今年度は、シゾンの研究室環境下における遺伝子発現プロフィールの解析、並びに人為的ストレス環境下における遺伝子発現プロフィールの解析を行うことを計画し、細胞の培養環境の構築から着手した。先ず、研究室の実験環境整備を進めるべく、シアニジウム類を安定的に培養する為の培養装置を作製した。これにより研究室環境下でのシゾンの培養系が軌道に乗り、基本データとなる遺伝子発現プロフィールの素材を確保することができた。次に、新規研究室環境下でのマイクロアレイ実験系の構築をおこなった。研究室は必須実験機材がかなり不足した状態であるが、シゾン細胞からの核酸の抽出、RNAの精製、cDNAの作製などは一通り可能となった。そこで新規培養環境下でのシゾンの遺伝子発現プロフィールの解析をおこなった。アレイのスライドガラスはカスタムメイドのものを使用し、方法は従来のアミノアリル法に従った(Fujiwara et al.DNA Res.2009)。その結果、シゾンの研究室培養環境下における通常状態の遺伝子発現プロフィールを得ることができた。42℃、pH2.3の高温強酸性環境下におけるシゾンの高発現遺伝子は、熱ショックタンパク質や活性酸素分子種の除去に関わる遺伝子など、いわゆるストレス応答に関わるものが多く、常温中性環境下に棲息する既知の生物とはかなり異なることが示唆された。既に、人為的ストレスを与える以前にストレス応答遺伝子の発現が高いことが明らかとなった。一方、人為的ストレスについては、現在、温度、活性酸素分子種の添加の2条件について解析をすすめており、こちらもデータを得るところまで来ている。
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