研究概要 |
平成23年度は研空室環境下のシゾンにそれぞれ高温、酸化ストレス、高濃度金属イオンストレス(鉄、亜鉛)を与え、各々のストレス添加時における遺伝子の発現プロフィールをマイクロアレイにより解析した。まず、転写産物の増加する遺伝子に着目し、RT-PCRやノザン解析によりその発現量変化の再現性を確認し、候補遺伝子の絞り込みを進めた。その結果、高温ストレスに関しては多くのヒートショックプロテイン(HSP)遺伝子が対照区の42℃の通常培養下で発現しているなかで、高温ストレス(48℃以上)添加時にのみ、特異的に発現量が増大する2つのHSP遺伝子を見出した。この2つの遺伝子は22℃の培養から42℃へと20℃の温度差で高温条件にしても発現は誘導されず、48℃以上という絶対温度を感知して発現が誘導されることが判った。高濃度金属イオンストレスに関しては、鉄、亜鉛の何れの添加でも、葉緑体の光呼吸系で機能することが知られている、セリングリオキシル酸アミノトランスフェラーゼ(SGAT)という遺伝子の発現が特異的に上がることが判った。このタンパク質に対する抗体を作製してその局在性を調べたところ、金属イオンストレスの無い条件では細胞質に大部分が存在する一方で、金属イオンストレス環境下においてはタンパク質量が増加し,ペルオキシソームに集積することが明らかとなった。金属イオンストレス下で他の光呼吸系の遺伝子の誘導が見られなかったことから、この酵素が光り呼吸ではなく、金属イオンストレスへの適応に関与していることが示唆された。酸化ストレスに関しては、葉緑体で活性酸素を発生されるメチルビオローゲンを添加した際に、光化学系の遺伝子発現が抑制されカルビン回路の遺伝子発現が増加することが判った。遺伝子の発現レベルで、葉緑体内の酸化還元状態を調節している可能性が示唆された。
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