研究課題
本年度は、本研究課題により進めていたNOESY-FLYA法の開発に成功し、NOESYスペクトルのみを入力データとして、蛋白質立体構造の全自動構造解析アルゴリズムの実証実験に初めて成功した。ここでは、モデル試料としてクロレラ由来のユビキチン(76a.a.:SAIL標識)、及び高度好熱菌HB8由来のTTHA1718(66a.a.:二重標識)の完全自動構造解析を行った。実証実験の結果、従来の手動解析による構造計算と同程度の精度で立体構造解析が全自動的に可能となることを示すことができた(Ikeya et al. in press)。本法を用いれば、NOESY以外のスペクトル・構造情報を全く必要とせずに、化学シフト帰属から立体構造決定に至るまで全ての解析過程を自動化することができる。また、従来の安定同位体2重標識試料に加えて、SAIL標識した試料においても、アルゴリズムの大きな変更を必要とせずに適用でき、高精度の構造解析を達成できたことから、本手法の高い汎用性を示すことができた。現在、in-cell試料から得られたスペクトルに適用させる準備を進めており、本手法により従来の3重共鳴スペクトルだけでは感度の問題から不十分であった側鎖の帰属について、NOESYから補完して帰属可能となると期待できる。具体的なin-cell MR法の応用例としては、本年度、GB1蛋白質の構造決定に新たに成功した。2009年研究代表者らは世界で初めて生きた細胞中での立体構造解析に成功したが、それ以後2年経た現在まで、未だ世界第2例目の立体構造解析に成功した例はなかった。今回、本研究課題により世界第2例目の構造決定も本研究グループによって達成されたことから、in-cell NMR立体構造決定技術の拡張、および汎用化に向けて大きく前進した成果となった。
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J.Biomol.NMR.
巻: (published online ahead of print)
Nature Protocols
巻: 5 ページ: 1051-1060
Proc.Natl.Acad.Sci.USA
巻: 107 ページ: 9644-9649