短い時定数を持つ蛋白質のコンフォメーションを1分子のレベルで検出し、構造変化と化学反応を同時観察することでメカニズムを理解することが本研究の目的である。そのために、偏光変調全反射型顕微鏡を用いた蛍光分子1個の向き検出時間分解能をこれまでの0.5秒から数十ミリ秒までに向上させることを目標とした。この顕微鏡をモーター蛋白Fl-ATPaseに応用し、ATPase反応において時定数の短いリン酸解離待ちと ADP 解離待ちのコンフォメーションを決定することが具体的な目的である。22年度の研究において、まず、コアレスモーターにλ/4板を組み込み、従来のステッピングモーターの回転速度である1Hzから200Hzにまで速度を上げて1分子の蛍光を検出することができた。ただし、選定したコアレスモーターの性質上、回転速度の立ち上がりに20分程度の時間がかかることが明らかになった。今後モーターのドライバーの変更などにより速度の立ち上がりを高速化、安定化する予定である。次に、λ/4板とプリズムを張り合わせてひとつの素子とし、モーターに組み込むことにした。これは、両素子を安定して高速で回転させる狙いがある。レーザー光をエバネッセント領域に周回させ、その円の接線の方向に常に偏光の向きが向くように2つの素子を調整しながら張り合わせるのが最適であることがわかった。本研究では、測定の時間分解能を向上させるアプローチに加え、構造の時定数をのばす方法も検討した。磁気ビーズを結合したF1-ATPaseの中心軸を外部磁場で回転方向に制御する事により、触媒サブユニットの構造遷移の検出を試みている。
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