研究概要 |
生物が環境に応じて表現型を変化させることを表現型可塑性という。半水生植物のニューベキア(Neobeckia aquatica)は、生育環境に応じて葉の形態を単葉から複葉までさまざまに変化させる。これは、水没などの環境変化に適応するために役に立っていると考えられ、環境応答および葉の形態の決定機構という観点から興味深い。 これまでニューベキアが空気中と水中で異なる形態の葉を発生することが知られていたが、生育温度によっても葉の形態が大きく変化し、25℃では単葉を発生するのに対して、20℃では複葉を発生した。さらに低温の7℃で生育させると葉身が水中葉の様に針状になることから、低温条件は水没条件を模していると考えられた。また、葉の形態は、発生の早い時期に決定されていた。複葉を持つ多くの植物では、ホメオボックス遺伝子であるKNOX遺伝子が葉原基で強発現し、ジベレリン合成経路が抑制されていることが知られている。ニューベキアを用いて,KNOX抗体による免疫組織染色を行った所、複葉を発生する条件では小葉原基でKNOX蛋白質の強い局在が観察された。また、ジベレリンの添加で単葉が発生し、ジベレリン生合成阻害剤の添加で複葉が発生した。以上から、ニューベキアの葉の形態決定においてもKNOX経路が重要であることが示唆された。 次年度は、様々な環境条件で生育させたニューベキアを用いて、次世代シークエンサーによる網羅的な遺伝子発現解析を行う予定である。
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