研究概要 |
ニューベキアは、気中で生育させると生育条件により単葉から複葉まで様々な形態の葉を発生する。本年度はまず、葉の形態と環境との関係を詳細に調べ、温度および光強度によって葉の形態が変化することを明らかにした。次に,茎頂培養したニューベキア葉が大きくなって行く過程をタイムラプス撮影して観察した。単葉が形成される過程では、葉原基の基部の部分に新しい鋸歯が足されながら葉が大きくなっていた。また、複葉形成過程では、葉原基の基部から小葉原基が発生し、さらに、小葉原基の基部から二次小葉が形成されていた。Eduの取り込みにより細胞分裂している細胞を可視化したところ、基部でのみ細胞分裂が行われていることがわかった。また生育環境を途中で変化させると、葉が移行的な形態を示したが、その形態も基部が形態を変化させていることを示していた。以上の結果から,ニューベキアの葉原基の基部が環境に応答し形態形成を行う重要な部位であることが明らかとなった。 ニューベキアの表現型可塑性の発現は、葉の発生などに関与する遺伝子の発現部位や量が環境に応じて変化することでおこると考えられる。そこで、次世代シークエンスを用いたトランスクリプトーム解析により、表現型可塑性の発現に重要な遺伝子も同定を試みた。まず、複葉および単葉を発生する条件で生育させたニューベキアのmRNA-seq解析を行い,得られたリードをシロイヌナズナのゲノムにマッピングすることで、網羅的遺伝子発現解析を行った。その結果,植物ホルモン関連遺伝子や、葉の発生に関わる遺伝子の発現が葉形変化に伴って変動していることが明らかとなった。今後は、これらの遺伝子の時空間遺伝子発現解析や機能解析を行い,ニューベキアの示す葉の形態の表現型可塑性のメカニズムを分子レベルで明らかにしていきたい。
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