低分子RNAのグローバルな分解に機能するPpERI1およびPpSDN3遺伝子、低分子RNAの標的候補遺伝子であるPpFAS1遺伝子について、過剰発現株、誘導過剰発現株および遺伝子欠失株を作出した。現在リプログラミングにおける表現型を解析中である。PpERI1およびPpSDN3遺伝子の欠失株については原糸体や茎葉体に表現型が観察されないことから、同様の機能を持つPpERI1 PpSDN1、2、3遺伝子の間で機能の冗長性があると考えられた。そのため、これらの遺伝子が全て欠失した四重突然変異体を作出中である。また、低分子RNAの生合成に不可欠なPpDCL遺伝子については、ドイツフライブルク大学と共同研究を開始した。PpDCL遺伝子群の多重遺伝子欠失株や過剰発現株の供与を受ける予定である。 リプログラミングを制御する低分子RNA関連因子の探索の過程で、PpCSP遺伝子群に注目した。PpCSPは、動物の人工多能性幹細胞(iPS細胞)の誘導に必須の四つの遺伝子の一つLin28のオーソログと考えられる遺伝子である。動物細胞において、Lin28は分化状態の維持に機能する低分子RNAlet-7の生合成過程を阻害することで、幹細胞化を補助する機能を持つ。ヒメツリガネゴケにおいてPpCSP1、2、3、4の四重遺伝子欠失株を作出してリプログラミングアッセイを行った。その結果、四重変異体ではリプログラミングが明瞭に遅れていた。動物のLin28と同様に、陸上植物においてはPpCSPがリプログラミングに機能していることを明らかにした。Lin28の標的let-7は陸上植物には保存されておらず、PpCSPがどのように低分子RNAを制御してリプログラミングに寄与しているのかを解明することが来年度の課題である。
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