研究課題
インスリン抵抗性やパーキンソン病等の発症に、グルコース1分子とセラミドから構成されるスフィンゴ糖脂質、グルコシルセラミド(GlcCer)の過剰蓄積が関与することが分かってきた。GlcCer量を制御する機構が明らかになれば、より詳細な発症メカニズムの解明や効果的な薬剤開発へと繋がる可能性がある。当初はカベオラ(Ω状の細胞膜ドメイン)形成に関与するカベオリンというタンパクがGlcCer合成量を調節しうる因子であるという仮説を軸に研究を進めたが、より生理条件に近いGlcCer合成酵素アッセイを開発し、この仮説を検証した結果、これを支持するようなデータは得られなかった。しかしながら、この新たなアッセイ系を用いることで、AMP-activated protein kinase(AMPK)がGlcCer合成酵素の活性を制御する因子であることを見出した。AMPKはAMP/ATP比が高い環境すなわちエネルギー不足時に活性化され、ATPの消費を抑制し、ATP合成を促進するように代謝バランスを制御する、細胞内のエネルギーセンサーの役割を担うセリン/スレオニンキナーゼである。AMPKを活性化するグルコース枯渇時、2-deoxyglucose添加、およびAMPK活性化剤AICAR、メトフォルミン添加により細胞内GlcCer合成能の顕著な低下が観察され、またAMPKのアンタゴニストであるCompound C、およびAMPKのドミナントネガティブ過剃発現によりGlcCer合成活性の上昇が観察された。LC-ESI MSを用いた脂質定量解析の結果、AMPK活性化により細胞内GlcCer量が有意に減少することが示された。本研究によってAMPKを介したGlcCer・糖脂質合成制御機構の存在が明らかになった。
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THE JOURNAL OF BIOLOGICAL CHEMISTRY
巻: 287 ページ: 368-381
10.1074/jbc.M111.311340
巻: 286 ページ: 41669-41679
10.1074/jbc.M111.301796
http://www.kyushu-u.ac.jp/pressrelease/2011/2011_11_15.pdf