精子形成過程において第一減数分裂中期特異的にアポトーシスを多数出現させるマウス系統;MRL/MpJはExo1遺伝子に異常が見られる。本研究では、MRL/MpJマウス型の第一染色体(100cM)Exo1遺伝子異常を再現したコンジェニックマウスを確立し、その精巣内における遺伝子発現レベルを網羅的に解析することにより、減数分裂中期特異的アポトーシス実行因子の同定を行うことを目的とする。本研究により、不良精子の排除機構を解明することが出来れば、生殖細胞の過剰なアポトーシスによる不妊症への応用が期待される。また、遺伝子損傷修復異常は癌の原因となることが知られており、その治療法の確立に重要な知見を与えるものと期待される。 第一染色体の原因遺伝子座(100cM)を持つコンジェニックマウス(B6.MRLcg)を作出した。具体的にはMRL/MpJマウスとC57BL/6とを交配させ、F1を作成し、さらにC57BL/6へと交配させることで、C57BL/6の遺伝的背景にMRL/MpJマウスのExo1遺伝子具常を持つB6.MRLcgマウスを作製した。交配は10世代行った。そのスクリーニングには染色体マッピングによってExo1と組み換えなく存在するマイクロサテライトマーカー(D1Mit403)を利用した。D1Mit403は555例のバッククロス個体のスクリーニングでExo1の近傍に存在することが証明されている。作製したB6.MRLcgについて、形態学的に観察したところ、MRLマウス精巣と同様にB6.MRLcgにおいて、減数分裂中期(ステージXII)にアポトーシスが集中していた。これより、B6.MRLcgは、MRLマウスの表現型を再現し、そのアポトーシスはExo1異常によるものであることを明らかにした。
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