本研究は、地下灌概が水田の土壌環境(温度・溶質移動・酸化還元電位・pH)と窒素動態に及ぼす影響を評価することを目的としたものである。地下灌概は近年普及が進んでおり、我が国の食料自給率の向上と水田農業における経営の安定化において期待されている。本研究の内容は、地下灌概水田における水管理や気象条件の変化に応じた土壌の酸化還元状態と窒素動態の変化を予測するための「圃場調査」・「室内実験」・「数値計算」により構成される。 H22年度は、圃場調査において土壌の諸物性の測定および水分量・温度・電気伝導度変化のモニタリング開始が予定されていた。土壌の諸物性については、サンプリングを行い室内実験と数値計算に必要な項目について測定を行った。水分量変化等のモニタリングについては、調査圃場(福島県南相馬市)がセンサー設置予定の数日前に東北・関東大震災による津波被害を受けたと思われ、状況の把握を行っているところである。状況が確認でき次第、今後の方針を決定したい。室内実験については、水田土壌を充填したカラムに溶液を上方または下方から浸透させ、その後の酸化還元状態の経時変化を調べる実験を行った。また、還元状態の水田土壌を詰めた一次元カラムを用いて蒸発実験を行い、土中水圧と酸化還元電位の変化を測定した。この実験結果を用いて数値解析を行い、蒸発過程における土中の含水率分布の変化を推定し、酸化還元状態との関連を調べた。
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