マイオスタチン(MSTN)は筋形成を負に制御する因子である。一方、AMP-activated protein kinase (AMPK)は細胞内エネルギー状態を感知して活性化するシグナル伝達因子である。本研究ではMSTNの発現・機能調節に対するAMPKシグナルの役割について解明することを目的とする。本年度は昨年度に引き続き、研究計画に従い遂行し、以下の新知見が得られた。 1.前年度に確立した調整法で得られたウシ初代筋芽筋芽細胞の分化時にAMPKの活性化剤AICARで刺激したところ、対照区と比べ筋芽細胞でのミオシンタンパク質発現が低下し、筋管形成は有意に抑制された。しかし、分化制御因子myogeninのタンパク発現はわずかに上昇していた。このとき、MSTN mRNA発現は著しく低下した。また、分化後の筋管にAICARを添加したどころ、同様にMSTN mRNA発現が低下した。以上のことから、AMPKの活性化は分化を抑制するが分化抑制因子であるMSTN発現は反対に低下することが示された。 2.ウシ筋芽細胞におけるMSTN発現抑制の作用を明らかにするため、AMPK活性化時にMSTNで刺激もしくはMSTNの作用を阻害したときの細胞分化について解析した。MSTNとAICARは、ともにウシ筋芽細胞の分化を抑制し、MSTNとAICARを同時に添加したところ単独で刺激するよりさらなる分化の抑制が見られた。一方、MSTNのシグナル阻害物質であるSB431542は分化を促進したが、AICARの存在下では分化促進が見られなかった。以上のことから、AMPKの活性化はMSTN発現制御を介して分化を抑制する可能性が示唆された。
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