ストレス耐性付加など植物の環境適応能力を高める効果的な栽培・育種を行うためには、植物体内の複雑な生理分子機構を理解することが必要である。そこで、遺伝子の発現と機能をGFPにより非破壊で解析するように、植物体内のイオンや化合物を非破壊で解析できれば植物のストレス環境応答の理解に活かせると考えている。本申請者は、これまで非破壊での物質イメージング解析を行う実験系の確立および分子生物学的知見と結びつけた総合的な解析を進めてきた。今回、このイメージング原理を応用し、分解能を向上し細胞間レベルの物質輸送解析を進めることを目的としている。 22年度内に計画していたリアルタイムRIミクロイメージングシステムの改良では、コリメータ導入の検討までしか終了できなかったため、繰越し申請により23年度6月まで引き続きシステム改良を進めることとし、申請書に記載した二つ目の改良案の「ガラス蒸着型のシンチレータの利用(改良案2)」について研究を行った。 まず、正立顕微鏡を基本とし、板状のFOSと対物レンズの組み合わせにより微細な組織(100μm幅の根)内のRIシグナル(^<33>P)を検出できることを確認した。次に、FOSの表面保護材のアルミニウムを透明な保護材に変更したものを特別注文により作成したことにより、顕微鏡での明視野像を容易に取得できるようにし、植物組織の部位をRIトレーサの位置情報を正確に解析できるようにした。さらに対物レンズの倍率、RIトレーサ量の検討を行った結果、最大40倍までに拡大した組織内のRIトレーサの検出に成功した。また、数分間の画像取得を連続的に行うことにより、RIトレーサの動態を動画として取得出来るようにした。
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