園芸作物(ダイズとバジル)を用いて基礎試験を行った。消極送水の室内実験では、当技術が過剰な表面散水の回避、したがって、塩類集積や地下水汚染の回避による土壌環境の保全に寄与しうる一方、作物への水供給量を最適化することが課題となった。消極送水では、作物が必要とするよりも少ない水分が与えられることがあり、これが作物へのストレスとなり、収量や光合成産物の器官間分配の変化のほか、生理状態への悪影響が発生することが示唆された。また、チュニジアでの圃場試験では、ダイズにおいて、土壌環境保全効果のほか、労力の軽減効果が示された。現地試験期間での観察では、ごく断続的な降雨による水分が作物に利用され、消極送水による水分供給は、日照りが続いた期間に水分の不足を補ったことが示された。上記効果の有無をタイ国内でも検証すべく、タイ国アジア工科大学内の試験圃場での試験を開始したが、その後、洪水が発生し、圃場が水没したため、現地での試験を中止した。残存根による保水効果を検証する追試を行うため、土壌カラムを作成し、葉菜類やダイズを植え、土壌カラム内の根の密度を可能なかぎり高くした。その土壌カラムを最大容水量とし、50℃における水分の減少を計測した。結果、土壌のみで、作物の根がない場合と根を含む土壌カラムとの間に有意な差は認められなかった。透明な筒を利用した観察では、土壌中に根が伸長するにともなって、土壌表面と下層をつなぐ微細な空間が目視された。根によって形成された空間を通じて水分が失われることが、保水効果を低減する要因と考えられた。
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