研究概要 |
塩ストレスは植物の生育を制限する環境ストレスの一種であるが,植物の耐塩性を決定する要因の一つとして,どのようにして塩を体内に貯めこまないようにするのかが重要である。本研究では植物において未だ不明なナトリウムの吸収経路を同定することを目的とし,主にシロイヌナズナを用いて研究を行った。外部環境からのナトリウム吸収に関与していると考えられるccc遺伝子の発現解析をRT-PCR法により行った。組織間における発現の差異を調べたところ,発芽後10日程度の実生で最も発現量が多く,個体の発達に従って葉や茎における発現量が次第に減少することがわかった。ccc遺伝子の塩ストレスへの応答を調べたところ,NaClストレス処理後5時間目には発現量が減少したことから,シロイヌナズナでは塩ストレス下においてナトリウムの吸収量を減少させていることが示唆された。カリウム欠乏条件下ではccc遺伝子の発現量が増加すること,またカリウムを再添加することでccc遺伝子の発現量が減少することから,CCCはナトリウムとカリウム両方の吸収に関与していることが示唆された。現在,シロイヌナズナccc変異体の表現型について,様々なイオン環境下における生育の調査やイオン蓄積量などの詳細な解析を行っている。またccc遺伝子の過剰発現用コンストラクトの作成とシロイヌナズナの近縁種である耐塩性植物Thellungiella halophilaやイネの塩感受性品種や耐塩性品種におけるccc遺伝子ホモログの同定と塩基配列の決定を行っている。
|