本年度は、青枯病菌ゲノム上に溶原化している繊維状ファージ配列について、相同組換えを利用したファージ配列欠失株の取得を試みた。この際に得られた株の解析により、不明であったRSS1ファージの溶原/誘発機構について新たな知見を得た。 昨年度の研究で作製した相同組換え用コンストラクトをエレクトロポレーション法により青枯病菌C319株へ導入し、コンストラクトにコードされる抗生物質耐性を利用しスクリーニングを行った。得られた株について解析を行った結果、目的領域の欠失は行われず、しかし、コンストラクトの導入は観察された。このことからシングルクロスオーバーでの組換えを予想した。ところが、詳細な解析を行ったところRSS1ファージゲノム配列より予想された溶原領域外側に20bp程度の特異的な配列が4箇所存在し、その配列を利用しての組込みであることが判明した。この配列はdjf-siteであり、XerC/D系の機構を利用したものであることが予想された。これは植物病原菌に感染する繊維状ファージでは初めての発見である。このことからこの溶原化ファージはdif-siteを失った6662bでの切り出しと完全長である7288bでの切り出しとの2種類の切り出しが行われることが予想された。実際にファージの誘発を試みたところ完全長ファージが得られ、RSS0と名付けた。現在までに自然界より単離されている類似ファージ(RSS2)はRSS1と同様の構造をしており、完全長のRSS0ファージとこれら欠失型ファージとの出現比、安定性等に興味が持たれた。さらにRSS1ファージとRSS0ファージが宿主に与える影響については新たなテーマと成り得る。 4月28日に「植物病原菌の生存戦略における繊維状ファージ」(若手研究(B))が採択され、一部関連する内容についてはさらなる研究を行っている。
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