研究概要 |
前年度の研究により、糖質の消化酵素をinvitroで阻害する作用をもつことが報告されている主要な緑茶カテキン・エピガロカテキンガレート(EGCG)を0.5%(w/w)添加した食餌をラットに7目間摂取させたところ、非絶食下の空腸においてα-グルコシダーゼ(スクラーゼ、イソマルターゼ、マルターゼ、グルコアミラーゼ)の活性が低下することを見出した。本年度の研究では、より低濃度のEGCGを添加した食餌を継続的に摂取させ、小腸軸(十二指腸、空腸、回腸)に沿ったα-グルコシダーゼ活性分布ならびにグルコース依存性インスリン分泌刺激ペプチド(GIP)のタンパク質発現分布に及ぼす影響を検討した。EGCG無添加の食餌、EGCGを0,1%、0.2%(w/w)添加した食餌(糖質エネルギー比55%)をそれぞれSD系雄ラット(7週齢)に14日間摂取させたところ、体重、摂餌量、肝臓重量、脂肪組織重量ならびに12時間絶食後の血液生化学データ(血糖、インスリン、GIP、中性脂肪)に差はなかった。一方、EGCG添加量の増加に伴い、絶食下の十二指腸および空腸におけるα-グルコシダーゼ活性が低下しただけなく、GIPタンパク質発現量も減少するという重要な知見を得た。これらの結果から、糖質の消化酵素を阻害する作用をもつEGCGを食餌と共に継続的に摂取させ小腸への糖質の流入を減少させることは、適応的に小腸における消化吸収機能やインスリン分泌促進に関与する消化管ホルモン産生を制御し、急激な食後の血糖上昇や過剰なインスリン分泌をさらに抑制する方向にはたらく可能性が示唆された。
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