研究課題
黄色ブドウ球菌研究室株および臨床分離株の中から、タンパク質をマトリックス主成分とするバイオフィルム形成株を選択した。高濃度の塩処理により、バイオフィルムマトリックスを抽出し、そこに含まれるタンパク質をアミノ酸シーケンス解析、LC-MS/MS解析により同定した。その結果、138個のタンパク質が同定され、その内訳は細胞質タンパク質100個、細胞外タンパク質18個、膜タンパク質12個、機能未知タンパク質8個であった。この中で、最も存在量が多かったMHC class IIファミリータンパク質Mapについて、GFPを用いたレポーターアッセイにより局在性を調べたところ、培養時間とともに細胞表層および細胞間隙にMap-GFPの蛍光の増加が観察された。これにより、バイオフィルムマトリックス構成タンパク質(BMCP)の時空間的動態の一部を明らかにすることができた。これらと並行して、遺伝学的にBMCP遺伝子を探索するために、トランスポゾン変異導入によるバイオフィルム形成能低下株の取得を試み、16種類の変異株を分離した。今後、さらに多くのバイオフィルム形成能低下株の取得を試みるとともに、BMCP遺伝子の同定を進めていく。また、Brevibacillus発現・分泌系を用い、表皮ブドウ球菌が産生する黄色ブドウ球菌バイオフィルム破壊酵素(細胞外セリンプロテアーゼEsp)の高効率発現・精製系を確立した。これにより、20mlという少量の培養液から5mgもの大量のEsp精製標品を効率的かつ容易に精製することが可能となった。さらに、精製したEspを用いてEspの標的分子の探索を行なったところ、EspはプロテアーゼKなどのエンドペプチダーゼとは異なり、ある特定のバイオフィルムマトリックス構成タンパク質および細胞壁タンパク質を分解するという興味深い知見を得た。
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Applied and Environmental Microbiology
巻: 76 ページ: 4277-4285
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