研究課題
黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成メカニズムの解明とバイオフィルム感染症制御法の開発を目的とし、以下の点について検討した。1.バイオフィルムマトリクスタンパク質の機能解析これまでに黄色ブドウ球菌のバイオフィルムマトリクス中に多数の細胞質タンパク質が含まれることを見出している。これらのうち生存に重要な分子シャペロン(DnaK、ClpB)、細胞骨格タンパク質(FtsZ)に着目し、バイオフィルム形成との関連性を調べた。その結果、いずれも黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成を有意に促進することを見出した。さらに、DnaKとClpBについては抗体を作製し、細胞表層の局在量を臨床分離株間で比較した。その結果、バイオフィルム形成能の高い株で菌体表層の局在が多いことを明らかにした。これら知見は細胞外に排出された細胞質タンパク質の新たな機能を示唆しており興味深い。2.バイオフィルムマトリクスタンパク質の局在解析間接蛍光抗体法により、バイオフィルムマトリクスタンパク質として同定されたMap、DnaK、ClpBの局在を解析した。Mapは細胞表層の広範囲に局在した。一方、DnaKとClpBは細胞分裂面周辺に多く局在した。現在、大気圧走査電子顕微鏡を用いて詳細な局在部位を解析している。3.バイオフィルム破壊酵素Espの作用機序の解明常在菌である表皮ブドウ球菌が産生するEspが特異的に分解する黄色ブドウ球菌の細胞表層タンパク質を探索した。その結果、Espは既知のバイオフィルム関連タンパク質(Atl、Emp、FnBPA、Map、Spa)や宿主への定着・病原性に重要なタンパク質(Efb、IsdA、Sbi、SceD、SdrD)を分解した。また、新たにバイオフィルム形成に関与することが示唆された細胞質タンパク質もEspにより分解されることが分かった。さらに、Espは細菌-宿主間相互作用に重要な宿主タンパク質(Fn、Fg、Vn)を分解することも明らかにした。Espはこれらのタンパク質を分解することにより、黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形成や宿主への定着を阻害すると考えられる。
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