研究概要 |
初年度は、OsSPS1遺伝子周辺の染色体をカサラス型染色体に置換した染色体断片置換系統(CSSL)を開放系大気CO2倍加実験(FACE)で栽培し、FACE効果およびCSSL効果による高SPS活性がバイオマス生産に及ぼす影響を評価した。つくばみらい市に設置されたFACE施設において、コシヒカリおよびコシヒカリのOsSPS1を含む染色体領域をカサラス型染色体に置き換えたCSSL[CSSL(SPS)]を材料として、通常大気CO2濃度条件下(Ambient区)と高CO2濃度条件下(大気+200ppm CO2,以下FACE区)で栽培を行った。これらの各実験区はそれぞれ異なる水田3ヶ所に設置した(Ambient区,FACE区それぞれ3区)。収穫期に各区6個体ずつの主稈をサンプリングし、部位ごとの長さおよび乾物重を測定した。その結果、FACE効果により、主稈における稈の乾物重はコシヒカリおよびCSSL(SPS)ともに有意に増加した。この稈の乾物重の増加は、コシヒカリ(108%)よりもCSSL(SPS)(116%)の増加率が高く、CSSL効果による応答の違いが見られた。またこの稈の乾物重の増加は、特に下位節間の増加によるものであったが、節間長や稈の長径(最大部)に大きな変化が見られなかったことから、デンプンなどの炭水化物の蓄積によるものと考えられる。今後は、FACE効果やCSSL効果によるSPS遺伝子の発現量や、下位節間におけるデンプン含量などの基礎的なデータを得ていく予定である。
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