現行の細根バイオマス量の測定手法には、作業に時間がかかること、樹種の判別が困難なこと、生死の判定が主観的であることの3つの問題がある。これら3つの問題を同時に解決する方法として、DNA量から回帰式を用いて細根バイオマス量を推定することが考えられる。本研究の目的は、「土壌からのDNA抽出効率」、「回帰式における推定誤差」および「枯死した細根におけるDNA分解速度」の3つの観点から、手法の実用性を評価することである。平成22年度は、土壌からのDNA抽出効率の評価と改善、回帰直線の作成を行った。DNAの抽出効率では、土壌による吸着のため、DNAの抽出効率が著しく低下することを確認した。そこで、DNAの抽出効率を改善させるために、DNA吸着を阻害するスキムミルクの添加実験を行い、スキムミルクの添加量にともなってDNAの抽出効率が上昇し、その後、一定効率になることを明らかにした。また、一定量以上のスキムミルクを添加することによって、土壌と混合させた細根と、土壌と混合させていない細根との間で、DNAの抽出効率に有意な差がなくなることを示した。このスキムミルク添加量において、回帰直線を作成したところ、土壌と混合した細根において、細根バイオマス量とCT値(DNA量の指標値)との間で、有意な回帰直線を描くことができた。また、当該直線が、土壌と混合させていない細根によって得られる回帰直線と有意な差がないことを確認した。
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