研究概要 |
これまでにBacillus sp.Isomaltooligosaccharide 6-α-glucosyltransferase (I6GT)のX線結晶構造解析の分解能は約3Åであったが,より高分解能の構造を得るため,I6GT結晶化条件の探索を行った.その結果,2.8Å分解能まで改善された.しかし,糖転移反応を理解するために必要な,水分子について議論できる分解能は得られておらず,更なる条件検討が必要である.これまでに塩,金属,有機溶媒,阻害剤等の様々な添加物や,スクリーニングキットを用いた結晶化条件の再検討を行ったが,結晶外形の変化は見られなかった.そこで,これまでの試行錯誤による条件決定から,より結晶成長学的な方法として過飽和度制御を行うため,溶解度を測定することとした.一般に結晶面の成長速度は過飽和度によって異なり,またその過飽和度依存性も面によって異なる.従って,適切な過飽和度のもとで結晶を成長させることで,構造解析に適した形の結晶を得られると考えられる.現在,二光束干渉計を用いた溶解度測定系を立ち上げており,今後は過飽和度を制御することで,構造解析に適した厚い結晶の作成を試みる.また,I6GT結晶化条件の探索と同時に,dextran glucosidaseの糖転移反応に重要と思われるwater pathの役割を解明するべく,変異体を作成した.water pathは,活性ポケットの底に位置し,立体構造から,ポケット内の水分子を排水する役割があると考えられている.このwater pathに面した部位に変異を導入すると,dextran glucosidaseの活性が低下した.今後は,この活性の低下と水分子の関係を明らかにする.
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