本年度はHaemaphysalis Longicornisより単離した嗅覚レセプター(HlOr)の解析およびハラー氏器官(ただし、本研究では全過程を通して第1脚足根を含めハラー氏器官と省略する)における嗅覚系に関与する新規遺伝子群の同定を目的に網羅的解析を前年度に引き続き実施した。まずマダニ体内におけるHlOrの局在を検証するため、推測されるアミノ酸配列をもとに合成したペプチドをマウスに免疫することで作製した抗H10rペプチド抗体を用いて、免疫組織蛍光抗体法にて局在を可視化した結果、マダニ第一脚にあるハラー氏器官に局在することが確認された。 次にハラー氏器官にて発現している嗅覚系遺伝子の網羅的解析のため、ハラー器官より回収・精製したRNAをイルミナ社Genome Analyzer IIxを用いて、poly(A)-RNAの次世代シーケンス解析を実施した。その結果、これまで蚊やハエ等において報告されている嗅覚関連遺伝子に相同性を持つ遺伝子断片と、7回膜貫通型配列を保存する遺伝子を単離することができた。 本研究課題の遂行により、マダニハラー氏器官において嗅覚レセプターの発現や局在が示唆されたことから、他の吸血性節足動物と類似した宿主探知プロセスを利用している可能性が推測される。マダニ宿主探知プロセスを解明し、誘引トラップや宿主探知阻害剤の開発を達成するためには、本研究にて得た成果を引き続き詳細に推し進める必要性があるものと考える。
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