研究概要 |
本研究はp95HER2を対象とした新規検査法の確立を行い、HER2陽性乳癌を用いた検査妥当性を評価し、治療抵抗性予測の可否についての検討を目的としており、本年度は以下の課題に取り組んだ. (1)抗p95HER2モノクローナル抗体を用いた測定法の確立. 複数のタンパク長の存在が知られているp95HER2群のうち、最も高い細胞増殖シグナル誘導能を示すことが知られているM611-p95HER2(Pederson, Mol Cell Biol 2009)のモノクローナル抗体の作製を試みた.N末端部分の合成ペプチド(Met611-Cys623)を結合したKLHを免疫原として用いてハイブリドーマの作製を行い、最終的に6種のクローンを得た。これらの培養上清を採取しELISA法およびドットブロット法による抗体反応性の確認を行ったたところ、免疫原として用いたMet611-Cys623ペプチドに選択的に反応し、このペプチドのN末端側のアミノ酸を欠失または同側にアミノ酸を付加したペプチドには反応を示さないクローンが得られた。そこでp95HER2陽性および陰性細胞のホルマリン固定パラフィン包埋セルブロックを作製し、両クローンを用いた免疫組織化学染色を行ったが陽性反応が得られなかった。この結果については十分な抗体量が得られていないため、高い抗体濃度による検討ができなかったことに起因すると考えられるため、十分な抗体量を得られた後に再度検討を行う予定である。仮にこの検討で良好な結果が得られれば、これまで検出が困難であったp95の測定が容易に行えることとなり、HER2治療の抵抗性予測の簡便化が期待できる。 (2)HER2陽性乳癌を用いた測定法確立と検査妥当性の検討. 症例の抽出は、2000~2003年に北海道大学病院において外科切除された浸潤性乳癌250症例を用いて検討した。HER2陽性乳癌は、組織マイクロアレイ標本を作製した後、細胞外および細胞内ドメインを認識する抗体を用いてHER2の免疫組織化学染色を施し特定した。上記(1)のホルマリン固定パラフィン包埋セルブロックにおける検討が終了次第、測定法確立と検査妥当性評価に着手する予定である。
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