研究概要 |
本研究では、ジェネティック解析とエピジェネティック解析結果とを組み合わせて、進行肝芽腫におけるDNAメチル化異常の関与を明らかにし、肝芽腫の予後予測因子となる分子マーカーを確立することを目的とした。SNP array解析によって明らかにされた、肝芽腫で高頻度にみられるLOH(Loss of heterozygosity)の領域(4q,16q)に位置する遺伝子を中心に、cell line(HuH6,HepG2,Hep3Bなど)および臨床腫瘍検体を用いてDNAメチル化異常の有無を検索した。具体的には、4q最小共通欠失領域に位置するIRF2,CASP3,MLF1IP,SNX25,MTNR1A,FSHD、および16q最小共通欠失領域に位置するWWOX,CDH15,CMTM3、また3p21に位置し高メチル化が予後規定因子となることが分かっているRASSF1Aのプロモーター領域のメチル化を、MSP法を用いて解析した。MSP法の条件設定が確立されたIRF2,MTNR1AおよびCDH15では、一部cell lineにおいて高メチル化を示すバンドが検出されたが、臨床腫瘍検体においては高メチル化を認めなかった。つまり肝芽腫においてそれらの遺伝子がメチル化異常によって不活化されている可能性は低いと考えられ、予後予測因子として有用なマーカーにはなりえないと判断した。 現在その他の候補癌抑制遺伝子におけるメチル化解析を進行中であり、今後も肝芽腫の予後予測因子となる分子マーカーを確立することを目的とした本研究を継続していく考えである。
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