食道切除術およびリンパ節郭清等の手術操作の影響によって生じる反回神経麻痺は、摂食・嚥下障害の原因になると同時に栄養状態の悪化をまねく。反回神経麻痺が生じた場合は、医師の指示のもと看護師と管理栄養士と言語聴覚士の介入によって食事援助・指導を行う。その介入方法は、施設によって様々であるが、言語聴覚士により嚥下機能がアセスメントされ、管理栄養士によりカロリー計算や患者が摂取できる食事形態の検討、看護師により食事摂取のモニタリングがなされる。しかし、反回神経麻痺が生じない場合は、軽度の嗄声が認められていても嚥下障害にはいたらず、看護師のみが食事介入を行うことが多い。この場合、言語聴覚士や管理栄養士が担う役割も看護師が担うことになる。看護師は患者の嚥下機能に応じた食事を提供し、かつ継続的に食事摂取のモニタリングを行っているが、看護師個別のアセスメントによって様々な方法で食事提供を行っている実情である。本研究は、北海道大学病院倫理委員会の承認を受けた後、過去2年間の食道切除術後患者へ提供されていた術後食の内容、身体状況、栄養状態、食事摂取状況から食事内容のパターン化と分析を行った。その結果、患者へ嚥下機能に応じた食事形態の提供が、栄養状態の悪化を最小限にとどめることを明らかにした。さらに、手術後は、水分誤嚥と胃食道逆流炎による誤嚥を防ぐための食形態として、七分粥を選択することが妥当だという研究成果を得た。
|