近年、前立腺肥大症の病態には、膀胱血流が大きく関与することが分かってきた。前立腺肥大症の動物モデルとされる下部尿路閉塞(BOO)モデルを使用して、抗血小板作用や血管拡張作用を有し、臨床現場で広く用いられているPDE3阻害剤が、膀胱血流が改善し、膀胱機能保護に有効か否かを検討するために、以下の実験を実施した。 12週齢Sprague-Dawley雌ラットに、BOOモデルを作成し、PDE3阻害剤としてcilostazolを、low dose(10mg/kg/day)、high dose(30mg/kg/day)の分け、自然飲水状態で投与し、(1)sham+water、(2)sham+cilostazol30mg/kg/day、(3)BOO+water、(4)BOO+cilostazol10mg/kg/day、(5)BOO+cilostazol30mg/kg/dayの5群に分けて検討した。4週間BOOモデルでは、膀胱機能は著名に低下しており、PDE3阻害剤投与によりどの程度、膀胱機能保護作用に寄与するかを等尺性張力収縮実験による電気刺激、薬物刺激(KCL(90mM)、Carbachol(10μM))での反応で検討した。 結果は、既報通り4週間BOOモデルでは、膀胱重量は有意に増加し、膀胱収縮機能は有意に低下していた。sham群ではPDE3阻害剤投与でも変化は認めなかったが、BOOモデルでは、PDE3阻害剤投与により膀胱収縮機能は改善していた。 膀胱にPDE3が存在すると言う報告はなく、全身のPDE3の効果、つまりは抗血小板作用や血管拡張作用が、結果として膀胱機能改善にも寄与している可能性が示された。しかし、実際に膀胱血流が改善しているか否かまでは検討出来ていないため、今後PDE3阻害剤の膀胱機能への作用機序等、更なる検討が必要と考えられた。
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