本研究課題の目的は、緩和ケア病棟で終末期がん患者に対する緩和ケア提供に係わる終末期医療費と診療記録調査による緩和ケアのプロセス評価データや遺族質問紙調査による緩和ケアのアウトカム評価データを連結したデータベースを作成し、以下の2点を行うことである:(1)緩和ケア提供に係わる終末期医療費と緩和ケアの質評価との関連を検討する、(2)終末期がん患者への緩和ケア提供に係わるケースミックス分類を開発する。平成22年度は、緩和ケア提供に係わる終末期医療費と緩和ケアのプロセス・アウトカム評価データとの連結を行った。緩和ケア提供に係わる終末期医療費の算出方法は、緩和ケア病棟は包括支払いのために診療報酬明細書(レセプト)ではなく会計カードから死亡前30日間の診療行為を調査し、出来高算定して特掲診療料を算出して用いた。会計カードの入力精度の比較的高い緩和ケア病棟8施設を対象施設に、2006年4月~10月に死亡したがん患者366名を対象者とし、会計カードに記載された約5万件の診療行為を出来高算定して特掲診療料を算出した。緩和ケアのプロセス・アウトカム評価データは、わが国で2006-2008年に行われた緩和ケアの質評価研究であるJ-HOPE studyの診療記録調査と遺族質問紙調査の既存データを用いた。診療記録調査は、緩和ケア病棟37施設で死亡したがん患者約2800名を対象に、死亡前に提供された終末期がん医療の実態を調査した。遺族質問紙調査は、緩和ケア病棟100施設で死亡したがん患者の遺族約5600名を対象に、緩和ケアの構造・プロセス評価尺度や終末期がん患者のQOL評価尺度を用いて遺族の視点からの緩和ケアの質を評価した。医療費調査、診療記録調査、遺族質問紙調査のすべてのデータを共通の調査IDで管理し、その調査IDを用いて3種のデータを連結した。
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